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No.73 2003年8月4日号
市場価値測定研究所
藤田 聰
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産学連携を考える
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先日、東京国際フォーラムで「ヒューマンキャピタル2003」というイベン
トがありました。次のアポイントまで時間が空いていましたので、パネルディス
カッションを聴きました。「IT人材育成への産・官・学連携の今後のあるべき
方向性を探る」というテーマで、企業経営者、経産官僚、大学教授、企業経営者
がそれぞれの立場で議論されました。
パネリストの経済産業省の方が担当されるITスキルスタンダード(ITSS)
は11職種、38分野に分かれ、7レベルの評価になっております。体系化され、
運用がイメージ出来、IT業界も、教育やキャリアパスの標準にしていこうとい
う流れになっているようです。
パネリストである経営者は、日本は情報化投資はアメリカを除けば、断トツで
行ってはいるものの、活用度という観点では、20位に位置し、主要国政府の情
報化成熟度は最も低いランクに位置するというデータを披瀝されました。
IBMに在籍していた頃から感じておりましたが、情報サービス産業はゼネコ
ン構造になっており、情報サービス産業協会のアンケートによると、教育投資は
売上の1.1%しかされていないというのが実態とのことでした。大手はそれな
りの教育投資をされてはいるものの、中堅、中小と企業規模が小さくなればなる
ほど、時間的・経済的余裕がなく、ゼロに近い状況です。
今後はこのようなゼネコン構造を打破するためにも、それぞれが自立して仕事
が取れるよう、ITプロフェッショナルの育成に力を注ぐべきでしょう。そのた
めのものさしとして、ITSSは指標と成り得るかと思います。
更に、もう1点。大学教授の方から、産学連携に関し、大学の先生の評価の実
態の指摘がありました。”誰も読まない研究論文をいかに多く出すか”という言
わば”研究ゴッコ”をしているとのことで、研究者という観点での評価が主で、
教育者としての評価軸がないとのことでした。よって、ごく一部の先生を除き、
教育には熱心でないとのことでした。実務に精通している民間の優秀な人材を学
には必要であるということを力説されておりました。
筆者も全く同感です。当社内で、インターンの学生と接する機会がありますが、
”考える力”がなくなっていることを痛感しています。大学の先生は知識を伝え
るのに終始して、知恵の部分が欠如しているようです。当たり前のことです。こ
れは強烈な競争原理が働かないところに身を置いていても、知恵というものは身
につかないものだからです。
持論ですが、日本では、大学は教育者的な視点が重要で、学生に何らかのきっ
かけを与えることが出来る人間的魅力がある人が必要だと思います。コミュニケ
ーション能力が高いことは必須要件でしょう。大学院は高度な専門家や研究者の
養成ということで、研究者・専門家中心で宜しいかと思います。
思い起こせば、筆者は経済学部に属しておりましたが、ほとんどの授業はつま
らないものでした。”面白い・役に立つ・体系的である”という観点が欠如して
いたかと思います。このところ、厳しい先生も少なくなったようです。
提案ですが、土曜日に、民間の優秀な方がボランティア的に授業を持つことを
きちんと体系化出来れば、大学も色々な意味で競争原理が働き、活性化していく
と思いますが、読者の皆さんはいかがでしょうか?トップマネジメント、起業家、
専門家で、優秀な生涯現役のシニア層は”ノーブリスオブリージェ”(高貴なる
人の義務)の精神で、時間さえ合えば、快く引き受けてくれるでしょう。
了。
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