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No.111 2005年3月7日号
経営と経営学

━━ Management Today = 市場価値を高めるヒント = ━━━━━━━━━━
                                                   No.111 2005年3月7日号
                                                      市場価値測定研究所
                                                                藤田 聰
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                          経営と経営学
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 日本経済新聞の「私の履歴書」、先月(2月)はピーター・ドラッカー先生で
した。過日の記述の中で、名門ハーバード大学からの数回のオファーを辞退され
たことが書かれておりました。何故、このような名誉のあることを辞退されたの
かと誰でも考えるでしょう?

 私自身もペンシルバニア大学で経営を学んでいた頃、ボストンのハーバード大
学に行きました。(決して通ったのではありません。)ビジネススクール(経営
学大学院)やケネディースクール(政治学大学院)は特に有名で、最も歴史のあ
るアカデミックな総合大学です。

 世界的な功績を残された経営者や政治家を数多く輩出されています。日本人の
このところの卒業生では、皇室の雅子皇太子妃、楽天の三木谷社長、ローソンの
新浪社長辺りが有名ですね。ハーバード大学の選抜方法は全米のある程度の名門
高校を中心に、各校成績上位5%以内は前提条件で、それに加え、潜在的な能力
・リーダーシップ・専門性等を中心に、言わば、「人間力」を卒業生が分担して
面接を行い、最終的に入学を認めるかどうかが決まります。

 教員の採用も、アメリカの大学では、大きなホテルを借り切って、各大学が集
まり、面接をして決定します。よって、一人の教員は多くの学校と一時に面接が
出来るので合理的なシステムと言えます。ハーバードの教員採用のポリシーとし
て、出来る限り、外部よりリクルーティングするという方針をとっているようで
す。

 内部のみであると組織が硬直してしまう危険性があり、外部から採用すること
で、教員間の競争やダイナミズムが形成され、活性化に繋がると考えているよう
です。ドラッカーの記述に戻りますが、ハーバードからのオファーを断った理由
として、“経営学という性質上、教育や研究活動に加え、外部でのプロジェクト
ワーク等が必要であるが、ハーバードとの契約では、従事出来る日数等、かなり
の制約があった”とのことです。

 私の恩師はドラッカーの著書を翻訳した社会学部の野田一夫先生(現・多摩大
学名誉学長)ですが、経営学について、全く同じ見解をされていました。立教退
官後、多摩大学を創設されましたが、経営を中心としたカリキュラムのため、実
務経験者で実績を出された方を中心に、教員を構成されました。現・中谷巌学長
もある意味で象徴的な存在ですね。そういえば、中谷様もハーバード大学ご出身
者です。

 先日も野田先生のオフィスでベンチャー経営者の会合があったのですが、“経
営学と経営は違う。簡単に要素還元的に分析をしてわかるようなものではない。
やはり、高邁とした志、執念や怨念めいたもの・・・等々、データから読み取れ
ない部分があるのではないか?それには、自らが経営をし、酸いも甘いも経験し
なければ、何ら説得力を持たないのでは?と大学教育に対して問題提起をされて
おられました。

 アメリカの留学経験では、先生は自分で経営をし、教壇に立つことは当たり前
のことでした。更に、大学教育という側面では、研究者という立場よりも、教育
者という立場の比重が高いのではと思います。大学に残り、研究者としての道を
進む学生は別として、就職をされる学生を対象とするならば、経営学ではなく、
日々経営をされている、文字通り、経営者がもっと教壇に立たれても宜しいので
はないかと考えております。

                                   了。

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