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研究プロジェクト
3 「ベンチャー系企業経営者の特質分析」結果報告
市場価値測定研究所 先端経営テクノロジー開発室 経営者分析プロジェクトチーム
調査目的
 本調査は、上記経営者は企業経営において具体的にどのような要素を重視しているのかを明らかにすることを目的にしている。とりわけ、本調査は、近年「ベンチャー企業」という名のもとに一律的に認識されやすい中小企業経営者の実態を明らかにする試金石となることを目的にしている。イメージばかりが先行しがちな、「ベンチャー企業」であるが、まず何よりもその実態を把握する作業が重要であろう。こうした作業は、既存の企業経営者、さらには将来起業を考えている若きビジネスマン・学生に対してイメージだけではない情報を与えるきっかけにもなりうるのである。
調査方法
 当社のホームページ上によるアンケート調査の方法をとった。また、メールマガジン等を通して、調査の参加を呼びかけた。むろん、こうした方法はWeb上にアクセスする者に被調査者が限定されるため、統計学上の「代表性」には問題もあろう。しかしながら、本調査はベンチャー企業と呼ばれる中小企業の実態把握のためのきっかけとなるべく企画されたものである。したがって、統計学的な厳密さを多少犠牲にしてでも、中小企業経営者や将来起業を目指す社会人のためにキャリア形成の参考資料となることを目指している。読者はこの点を何卒ご理解いただきたい。

質問項目はこちらから




1) 各属性別のサンプルの分布

図1は本調査のサンプルを業種別に見たものである。それによると、「情報通信」が最も多く25社である。ついで「建設・製造」が17社、「金融・保険・不動産」が12社と続く。累積%で見ると、「情報通信」・「建設・不動産」だけで63.6%と過半数を占める。

図1:業種の分布


図2は本調査のサンプルを企業規模別に集計したものである。企業規模別に見ると、「10-29人」が22社と最も多い。ついで「30-99人」が15社、「100-299人」が12社、「10人未満」が11社と続く。なお、「1000人以上」は1社もない。これは本調査が中小のベンチャー企業経営者を対象とするものであり、回答者もそうした属性の者であったことを示唆している。累積%で見ると、「10人未満」・「10-29人」で約50%を占める。

図2:企業規模の分布


図3は売上高別のサンプルの集計図である。「1億円以上3億円未満」が最も多く、22社を占める。「1億円未満」が21社、「3億円以上10億円未満」が15社と続いている。累積%で見ると、「1億円未満」と「1億円以上3億円未満」で67.2%となり、それに「3億円以上10億円未満」を加えると90.6%に及ぶ。

図3:売上高の分布


図4はサンプルである経営者の年齢分布を見たものである。それによると、「35歳まで」が21人と最も多い。「35歳以上40歳未満」は13人、「40歳以上45歳未満」は12人、「45歳以上50歳未満」は12人となっている。「45歳以上50歳未満」までの累積でサンプルの87.9%を占める。なお、本調査のサンプルの経営者の最年少は32歳、最高齢は54歳である。

図4:年齢分布


2)各質問項目の得点分布
 本調査では全25問の質問のうち、属性を調べるための5問を除外した20問について得点化を図り、数値化した。得点化の方法は、「イイエ」=1点、「どちらかと言うとイイエ」=2点、「どちらかと言うとハイ」=3点、「ハイ」=4点となっている。このような得点化を行った上で、各質問項目の全サンプルの得点状況を示したのが図5である。それによれば、最も平均得点が高いのは、「採用重視」の3.32点であり、次いで「納期遵守」の3.29点、「情報共有」の3.06点が続いている。これらはいずれも標準偏差を見ても0.70点から0.90点にあるため、中小企業経営者はこれらの諸要素を経営において特に重視していることが推察される。一方、最も平均得点が低かったのは、「権限委譲体系」の2.44点であった(標準偏差は1.01点)。それに「インターネット」の2.47点が続いている(標準偏差は0.93点)。意外にも本調査から見えてきたのは、部下に権限が委譲されるシステムができており、IT技術を駆使した「ベンチャー企業像」とは相異なる「日本的」な経営者像である。これをどう解釈するかは難しいが、少なくとも世間の風評のように中小企業経営の実態は革新的なものとは言えそうにない。逆に言えば、起業する者にとっては新技術を駆使した経営によって、旋風を巻き起こすビジネスチャンスの余地はまだまだ存在するのかもしれない。


3)各質問項目の相関係数
 表1(別紙)は各質問項目を得点化し、それらの相関係数を算出したものである。これにより、どの項目とどの項目の関係が強いのかが判明する。いくつか例を挙げよう。「権限委譲体系」と「給与体系」の相関係数0.64と比較的高い。これは仕事上の部下への「権限委譲体系」も進展しているほど、「給与体系」が実績主義である企業ことを示唆する。この他にも、「収益構造」が整備されているほど、「学習組織体系」がしっかりしていたり、「商品調査」や「販売経路」をきちんと実施していたりするなどの傾向を読みとることができる。また、「情報共有」がなされている企業ほど「給与体系」が実績主義であったり、「権限委譲体系」がなされていたり、「経営意思」や「営業意思」の決定が迅速であるという結果も見てとれる。

◆表1は別紙へ


4)クロス表集計
 ここでは属性別に見たクロス表集計のうち、示唆に富むものを挙げてみた。なお、以下のクロス表では「イイエ」と「どちらかと言うとイイエ」、「どちらかと言うとハイ」と「ハイ」をそれぞれ同一カテゴリー化して集計している。

まずは業種別に見たクロス表から見ていこう。表2から表7は業種を統制した上で、「給与体系」をみたものである。

表2からは、「情報通信」や「建設・製造」が「実績主義」をとっているところが多いことがわかる。その他の業種では、「金融・保険・不動産」を除けば「実績重視」と「非実績重視」はほとんど均衡している。


表2:業種と給与体系
業種 合計
建設・不動産 情報通信 流通・商業 金融・保険・不動産 電気・ガス マスコミ
給与体系 非実績重視 8 11 4 8 3 - 34
実績重視 9 14 4 4 - 1 32
合計 17 25 8 12 3 1 66

表3からは、意外にも大半の業種において「権限委譲体系」ができていないことがわかる。常識的に考えれば、中小企業では人員が少ないこともあり、一社員に対して責任ある仕事が任されていると考えられる。しかしながら、調査結果を見るとそれとは反対の結果が見えてくる。おそらく、この要因としては、経営者個人のリーダーシップが強固であり、一社員に権限を任せているという認識が回答者である経営者に存在しなかったということが考えられる。

表3:業種と権限委譲体系
業種 合計
建設・不動産 情報通信 流通・商業 金融・保険・不動産 電気・ガス マスコミ
権限委譲体系 できていない 12 17 6 10 3 - 48
できている 5 8 2 2 - 1 18
合計 17 25 8 12 3 1 66

表4によれば、これも意外なことであるが、サンプルの企業においては、「学習組織体系」が確立しているところが多数であることがわかる。日本の企業の強みは企業内教育にあると言われることがあるが、こうした事情は中小企業においてもある程度当てはまっているのかもしれない。もっとも、「学習組織体系」に関してはいわゆるOJTも含めて回答者が回答した可能性もあり、それが本質問項目に対する肯定的な回答を多くしたのかもしれない。なお、一般には、Off-JTのような研修等は中小企業では大企業と比較して充実していないという研究が存在する。

表4:業種と学習組織体系
業種 合計
建設・不動産 情報通信 流通・商業 金融・保険・不動産 電気・ガス マスコミ
学習組織体系 できていない 3 2 4 5 - - 14
できている 14 23 4 7 3 1 52
合計 17 25 8 12 3 1 66

表5は、業種ごとに社内の情報共有度を見たものである。これに関しては多くの業種において社内の「情報共有度」は高いと判断しうる。とりわけ、「情報通信」では「情報共通度」について「低い」とした経営者は1人もいない。

表5:業種と情報共有度
業種 合計
建設・不動産 情報通信 流通・商業 金融・保険・不動産 電気・ガス マスコミ
情報共有度 低い 4 - 3 6 3 - 16
高い 13 24 5 6 - 1 49
合計 17 24 8 12 3 1 65

表6は「経営意思決定」のスピードを見たものである。それによれば、大半の企業では「経営意思決定」は迅速であるという常識と合致するような結果が出ている。

表6:業種と経営意思決定
業種 合計
建設・不動産 情報通信 流通・商業 金融・保険・不動産 電気・ガス マスコミ
経営意思決定 迅速でない 6 6 2 5 1 - 20
迅速 11 19 6 7 2 1 46
合計 17 25 8 12 3 1 66

表7は、インターネット活用度を見たものである。ここから全般的にはインターネット活用度は高くはないものの、「情報通信」においては多くの経営者が「活用している」としている。

表7:業種とビジネスにおけるインターネット活用度
業種 合計
建設・不動産 情報通信 流通・商業 金融・保険・不動産 電気・ガス マスコミ
インターネット 活用していない 12 8 6 8 2 1 37
活用している 5 15 2 4 1 - 27
合計 17 23 8 12 3 1 64


次に、企業規模別のクロス表のうちいくつかをピックアップしよう(表8から表12)。ここでは企業規模を2つに再コード化して、「10人未満」と「10-29人」を「小企業」、「30-99人」と「100-299人」と「300-999人」(「1000人以上」は前述したようにゼロ)を「大企業」とした。したがって、以下の表中の「小」や「大」は上記の分類を指すため、一般的意味の大企業や小企業を指すものではない点に留意されたい。

表8は2つに再コード化した企業規模を統制した上で、「給与体系」を見たものである。それによれば、企業規模の大小に関わらず、実績重視か否かは関係がないことがわかる。


表8:企業規模と給与体系
企業規模二分割 (縦%)
合計
給与体系 非実績重視 51.5 51.6 51.6
実績重視 48.5 48.4 48.4
合計 33 31 64


表9は企業規模と「権限委譲体系」をクロスされたものである。ここから企業規模が小さい方が「権限委譲」ができていることがわかる。これは順当な結果であろう。少人数の社員の企業ほど社員一人一人の責任が重く、したがって権限も大きいと考えられるからである。

表9:企業規模と権限委譲体系
企業規模二分割 (縦%)
合計
権限委譲体系 できている 69.7 74.2 71.9
できていない 30.3 25.8 28.1
合計 33 31 64


表10は企業規模と「学習組織体系」のクロス表である。ここから企業規模が大きいほど、「学習組織体系」がしっかりしているということが垣間見ることができる。これも企業規模が大きいほど企業内教育訓練システムが確立しているという一般的な結果と合致している。

表10:企業規模と学習組織体系
企業規模二分割 (縦%)
合計
学習組織体系 できていない 24.2 19.4 21.9
できている 75.8 80.6 78.1
合計 33 31 64


表11は企業規模と「経営者の自己提案」を見ている。この表の質問文は「新規顧客獲得あるいは既存顧客維持のために自ら何らかの提案を行っていますか?」である。この表で着目すべきは企業規模が大きいほど経営者が新規顧客獲得や既存顧客維持のために積極的に自己提案を行っている点である。この解釈には慎重でならなければならないが、成長企業(企業規模が拡大中の企業)ほど経営者のリーダーシップや提案力が高いのかもしれない。

表11:企業規模と自己提案
企業規模二分割 (縦%)
合計
自己提案 消極的 33.3 19.4 26.6
積極的 66.7 80.6 73.4
合計 33 31 64


表12は企業規模と「インターネット活用度」をクロスさせたものである。ここでも企業規模が大きいほど「インターネット活用度」が高いという結果が出ている。この結果も意外といえば意外かもしれない。というのも、中小企業は人材戦術が不可能な分、インターネットをツールとして有効活用しているというイメージがあるからである。しかしながら、本調査の結果から見れば、相対的に企業体力のあると考えられる「大企業」の方がインターネットをビジネスで活用しているのである。

表12:企業規模とインターネット活用度
企業規模二分割 (縦%)
合計
インターネット 活用していない 67.7 48.4 58.1
活用している 32.3 51.6 41.9
31合計 31 31 62



【調査結果から−「ベンチャー企業」を考える視座】

 以上、本報告ではいくつかの観点から調査結果を分析してきた。そこで見られた結果を改めて繰り返しはしないが、「ベンチャー企業」を考える場合の視座として次の点を指摘したい。

第一に、「ベンチャー企業」と言っても何がベンチャー企業なのかという一般的合意はないように思われる。よって、「ベンチャー企業」というマジック・ワードに翻弄されることなく、中小企業の実態を丹念に分析・把握していく作業が重要である。これは「ベンチャー」=ビジネスチャンスという短絡的な思い込みを相対化するために必要な道標となろう。むろん、これは「ベンチャー」ビジネスを否定することを意味しない。それを成功に導くためにもクールな現状認識と将来予測が不可欠であるように思われるのである。

第二に、仮に「ベンチャー企業」を企業規模によって画定するにしても、中小企業も「日本的」と呼ばれる特質を複数有している点を忘れてはならない。これは、何もかも新しい(特にアメリカの)システムを導入すれば、うまくいくとは限らないということを示唆している。「日本的」と呼ばれるシステム自体が「悪」という陳腐で短絡的な発想を捨て、「日本的」な強みを再認識し、必要に応じて新しい企業システムを構築する道を模索した方が経営リスクも少ないのではないだろうか。



以上

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