4)クロス表集計
ここでは属性別に見たクロス表集計のうち、示唆に富むものを挙げてみた。なお、以下のクロス表では「イイエ」と「どちらかと言うとイイエ」、「どちらかと言うとハイ」と「ハイ」をそれぞれ同一カテゴリー化して集計している。
まずは業種別に見たクロス表から見ていこう。表2から表7は業種を統制した上で、「給与体系」をみたものである。
表2からは、「情報通信」や「建設・製造」が「実績主義」をとっているところが多いことがわかる。その他の業種では、「金融・保険・不動産」を除けば「実績重視」と「非実績重視」はほとんど均衡している。
表2:業種と給与体系
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業種 |
合計 |
建設・不動産 |
情報通信 |
流通・商業 |
金融・保険・不動産 |
電気・ガス |
マスコミ |
給与体系 |
非実績重視 |
8 |
11 |
4 |
8 |
3 |
- |
34 |
実績重視 |
9 |
14 |
4 |
4 |
- |
1 |
32 |
合計 |
17 |
25 |
8 |
12 |
3 |
1 |
66 |
表3からは、意外にも大半の業種において「権限委譲体系」ができていないことがわかる。常識的に考えれば、中小企業では人員が少ないこともあり、一社員に対して責任ある仕事が任されていると考えられる。しかしながら、調査結果を見るとそれとは反対の結果が見えてくる。おそらく、この要因としては、経営者個人のリーダーシップが強固であり、一社員に権限を任せているという認識が回答者である経営者に存在しなかったということが考えられる。
表3:業種と権限委譲体系
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業種 |
合計 |
建設・不動産 |
情報通信 |
流通・商業 |
金融・保険・不動産 |
電気・ガス |
マスコミ |
権限委譲体系 |
できていない |
12 |
17 |
6 |
10 |
3 |
- |
48 |
できている |
5 |
8 |
2 |
2 |
- |
1 |
18 |
合計 |
17 |
25 |
8 |
12 |
3 |
1 |
66 |
表4によれば、これも意外なことであるが、サンプルの企業においては、「学習組織体系」が確立しているところが多数であることがわかる。日本の企業の強みは企業内教育にあると言われることがあるが、こうした事情は中小企業においてもある程度当てはまっているのかもしれない。もっとも、「学習組織体系」に関してはいわゆるOJTも含めて回答者が回答した可能性もあり、それが本質問項目に対する肯定的な回答を多くしたのかもしれない。なお、一般には、Off-JTのような研修等は中小企業では大企業と比較して充実していないという研究が存在する。
表4:業種と学習組織体系
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業種 |
合計 |
建設・不動産 |
情報通信 |
流通・商業 |
金融・保険・不動産 |
電気・ガス |
マスコミ |
学習組織体系 |
できていない |
3 |
2 |
4 |
5 |
- |
- |
14 |
できている |
14 |
23 |
4 |
7 |
3 |
1 |
52 |
合計 |
17 |
25 |
8 |
12 |
3 |
1 |
66 |
表5は、業種ごとに社内の情報共有度を見たものである。これに関しては多くの業種において社内の「情報共有度」は高いと判断しうる。とりわけ、「情報通信」では「情報共通度」について「低い」とした経営者は1人もいない。
表5:業種と情報共有度
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業種 |
合計 |
建設・不動産 |
情報通信 |
流通・商業 |
金融・保険・不動産 |
電気・ガス |
マスコミ |
情報共有度 |
低い |
4 |
- |
3 |
6 |
3 |
- |
16 |
高い |
13 |
24 |
5 |
6 |
- |
1 |
49 |
合計 |
17 |
24 |
8 |
12 |
3 |
1 |
65 |
表6は「経営意思決定」のスピードを見たものである。それによれば、大半の企業では「経営意思決定」は迅速であるという常識と合致するような結果が出ている。
表6:業種と経営意思決定
|
業種 |
合計 |
建設・不動産 |
情報通信 |
流通・商業 |
金融・保険・不動産 |
電気・ガス |
マスコミ |
経営意思決定 |
迅速でない |
6 |
6 |
2 |
5 |
1 |
- |
20 |
迅速 |
11 |
19 |
6 |
7 |
2 |
1 |
46 |
合計 |
17 |
25 |
8 |
12 |
3 |
1 |
66 |
表7は、インターネット活用度を見たものである。ここから全般的にはインターネット活用度は高くはないものの、「情報通信」においては多くの経営者が「活用している」としている。
表7:業種とビジネスにおけるインターネット活用度
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業種 |
合計 |
建設・不動産 |
情報通信 |
流通・商業 |
金融・保険・不動産 |
電気・ガス |
マスコミ |
インターネット |
活用していない |
12 |
8 |
6 |
8 |
2 |
1 |
37 |
活用している |
5 |
15 |
2 |
4 |
1 |
- |
27 |
合計 |
17 |
23 |
8 |
12 |
3 |
1 |
64 |
次に、企業規模別のクロス表のうちいくつかをピックアップしよう(表8から表12)。ここでは企業規模を2つに再コード化して、「10人未満」と「10-29人」を「小企業」、「30-99人」と「100-299人」と「300-999人」(「1000人以上」は前述したようにゼロ)を「大企業」とした。したがって、以下の表中の「小」や「大」は上記の分類を指すため、一般的意味の大企業や小企業を指すものではない点に留意されたい。
表8は2つに再コード化した企業規模を統制した上で、「給与体系」を見たものである。それによれば、企業規模の大小に関わらず、実績重視か否かは関係がないことがわかる。
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